冷え症(冷え性)
冷え症(冷え性)とは
冷え性または冷え症は、特に手や足の先などの四肢末端あるいは上腕部、大腿部などが温まらず、冷えているような感覚が常に自覚される状態の事であります。
【冷え性と冷え症の違い】
冷え性は、検査で明らかな異常が見られないにも拘らず、手足が冷える、ゾクゾクと寒いなどの冷えの症状が認められ、明らかな原因のない冷えを西洋医学では「冷え性」の体質として扱われます。
それに対して「冷え症」は、東洋医学的な考えとして治療が必要な場合に使われます。
西洋医学では病気とまで捉えられることはないですが、東洋医学的には「冷え」は解決すべき問題点です。
冷えの原因
冷え症には日々の生活習慣が大きく関わっています。その主な原因は以下の通りです。
運動不足
運動不足は身体の代謝を低下させ、血液の循環を悪くする原因となります。
また筋肉量が少ないと体内で熱を生産することができず、上手く体を温められません。
特に女性の場合、男性よりも筋肉量が少ないので熱を作りにくく冷えやすい体質だといえるでしょう。
冷え症は女性に多い!その原因は
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女性の身体は筋肉量が少なく脂肪が多くなるのが特徴です。女性は男性に比べて筋肉量が少なく、また付きにくくなっています。そのため熱を作る力が弱いのです。また脂肪が多く、付きやすくなっています。
脂肪は一度冷えると温まりにくい性質を持っているため、冷えの原因となります。 -
子宮や卵巣などの臓器と月経があるのが関係しています。
子宮や卵巣など血流の妨げとなる内臓が多いため、腹部の血流が悪くなります。また月経時に血液が減るため、熱を伝える血液が体の末端まで届きません。 -
薄着や衣類の締め付けによって起こります。寒い場所でのスカートなどの薄着は、体を冷やしてしまいます。
また、下着やタイトな衣類での締め付けも血流を悪くし、冷え性の原因となります。
冷えは男性にもみられる
男性も加齢によって筋肉量の低下、臓器機能の衰えなどにより熱を発することが出来なくなり、冷えを感じます。
高齢の男性では頻尿の原因にもなります。体を温めると肩こりや腰痛などが楽になるような場合は、冷えが存在することがあります。
食生活を含め、生活習慣の乱れ
現代人の体温は、昼夜逆転の生活や朝食抜き、食事の時間がバラバラなど、生活習慣の乱れによって低下しているといわれます。
元々体温は、早朝が最低で、起床して朝食をとるとともに急激に上がり、昼過ぎから夕方まで緩やかに上昇した後、夜間に向かって下がっていくものです。しかし、乱れた生活習慣は自律神経のバランスを乱し、体温調節機能が乱れて冷え性を招きます。
冷たい飲食物や甘いもの、ファストフードやスナック菓子を食べ過ぎる事や、無理な食事制限を伴うダイエットによるミネラル、ビタミン不足に陥ることで、体を冷やし、血液をドロドロにして循環を悪くする原因となります。
また、昨今では夏場はエアコンの効いた室内で冷たいものを食べ、冬場は温かい室内でゴロゴロと、体の体温調節機能を使わない生活が主流です。そのため、元々備わっていた体温調節機能が低下している人が増えているのです。
ホルモンバランスの乱れ
女性は男性にはない月経、出産、閉経といったライフステージでの変化があり、ホルモンのバランスが乱れやすい傾向にあります。
ホルモンバランスが乱れると、体温調節をしている自律神経が影響を受けて、血液の循環が悪くなり、冷え症になりやすいのです。
人によって感じ方は様々ですが、「生理中は体が冷えやすい」「冷えによって生理痛が酷くなる」という方もいます。
また、女性ホルモンの量がぐんと減る更年期には、冷えが酷くなるという方が多くなります。
喫煙
タバコは急激に血管を収縮させてしまい、血液の流れを悪くするとともに基礎代謝も低下させ、冷えに結びつきます。
便秘
腸内で蠕動運動が行われていないということで基礎代謝も低くなります。
冷え症の症状と種類
人によって冷えの感じ方は様々です。
軽度であれば「冷えを感じる」という程度ですが、中度になってくると冷えている箇所がこわばり始めます。
重度になると、冷えの箇所に痺れを感じるように。ここまで冷えてしまうと、日常生活に支障が起きる「冷え症」と思われますので、中度以上と感じられたらできるだけ早く受診をお勧めします。
また冷えは、血流の流れが悪くなるために起こるので、便秘や下痢、肌荒れ、くすみ、頭痛、腰痛、蕁麻疹、アトピー、膀胱炎、頻尿などの症状を誘発することにもなります。
重篤な病気で冷えることもありますので、「冷えは病気じゃない」と思わず、不安な場合は医師に相談することです。
冷えと言ってもいくつかの種類があります。
その種類によって改善方法や対策が違いますので自分がどのタイプに当てはまるのかを知っておくと良いでしょう。
① 末端が冷えるタイプ
血液がドロドロだったり、血管が細かったりして血行が悪い状態だと、血液が手足の末端部分まで届きません。
そのため、手足の末端が冷えてしまいます。だからと言って手足だけを温めようとしてもこのタイプの冷え症は改善されません。
なぜなら、人間の身体は先ず内臓を温めようとして、体の中心に血液を集中させてます。その結果、末端である手足には十分な熱が行き渡らなくなってしまうのです。したがって、まずは腹巻などでお腹を温めて体全体に熱が行き渡るようにしてみましょう。
② 下半身が冷えるタイプ
このタイプは骨盤のゆがみが原因である場合が多いです。
姿勢の悪さや同じ方向を向いての就寝、同じ方に足を組むことが原因で身体や骨盤が歪んでしまいます。そうすると、下半身の血行が悪化し、代謝が悪くなってしまうのです。さらにお尻や太ももに蓄積される老廃物がセルライトという塊になってしまい、身体の冷えがますます酷くなります。
常に正しい姿勢を意識し、よくスクワット、縄跳び、半身浴などで代謝を良くしていくように心掛けましょう。
③ 内臓が冷えるタイプ
ストレスとの関係が深い冷え症だと言えるでしょう。
自律神経が異常を起こし、手足の末端部分の血管が収縮できなくなり、その結果、内臓に血液を集めることが出来ず、内臓が冷えてしまいます。このタイプでは手足は温かいことが多いので、冷え症だと気づかずに過ごしてしまうことも多いのです。しかし、お腹を下しやすくなった、身体のだるさを感じる、風邪を引きやすくなったなどの症状を感じたら、このタイプの冷え症かもしれません。
内臓の働きを良くして血行促進してくれる生姜などの身体を温める食べ物を摂ることで、内臓の冷えを予防し改善することができます。
④ ホルモン不規則体質
女性に多く関係することです。ホルモンのバランスが乱れることによる自律神経の不調、これが原因で冷え症になります。
特に更年期を迎える女性に多い症状です。
⑤ 自律神経失調体質
自律神経は内臓、血管などの働きを一定に保ち、バランスを整えています。
汗や温度調節もそうですが、胃の働きや目の動きなど自然なことも自律神経で制御されています。
これが乱れると、疲れが取れない、イライラする、胃がもたれる、肩が凝るなどの症状を引き起こします。
⑥ 鉄分不足体質
女性がなりがちです。ダイエットなどの食事を極端に減らすことにより、鉄分不足になります。
特に女性は生理等もありますので、必要以上に鉄分を摂取しなくてはなりません。この状態が続けば、いずれ貧血を起こします。
貧血は血液中の赤血球が少ない状態のことで、赤血球は酸素を運搬する役目を担っています。
すなわち赤血球が少ない血液は酸素を運搬する力がなく、結果として体力不足・疲れやすく、手足が冷える状態を作ってしまうのです。
冷え症に対する中医学の認識と弁証論治
冷え症とは、中医学でいえば陽虚証に属することが多い症状です。
冷え性の臨床表現は多岐にわたっており、主症は四肢、腰、腹など身体に冷感があり、ときに疼痛を伴うもので、温めると楽になります。酷くなると頭痛、肩こり、顔色晄白、精神不安、疲れ、動悸、息切れ、自汗などの症状が現れます。
また体液、例えば唾、涎、涕(鼻水)が水のように薄く、小便清長、下痢を伴い、舌淡胖嫩、あるいは歯痕があり脈沈、遅、虚などであれば冷え症とされます。
●中医学で考える冷え症に対する病因病機は以下の場合が多くみられます
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生まれつきの心陽、脾陽、腎陽の虚弱体質、或は病気が原因で陽虚となる
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生活環境の影響、飲食不節などが原因となり、体内に寒邪が溜まって冷えがみられる
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気滞血瘀により全身に気血が行き渡らず、温喣作用が失調するため冷えの症状が現れる
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血虚による血瘀となり、血行が悪くなり、特に四肢末端まで血行が行き渡らず冷えを起こす
東洋一心堂漢方薬局での弁証論治
【心陽虚証】
■ 症状
四肢と腰の冷えや痛み、寒がり、疲れ、顔色晄白、心悸、自汗、胸痛、息切れ、舌淡苔白、脈沈細
■ 治法
温補心陽
■ 処方
桂枝甘草竜骨牡蠣湯加味
【脾陽虚証】
■ 症状
四肢と腰の冷えや痛み、寒がり、疲れ、顔色晄白、食欲不振、腹部脹満、胃脘疼痛、腹部冷痛、温めると楽になる、浮腫、女性の場合は帯下白稀、大便溏薄、舌淡苔白、脈細弱
■ 治法
温中補虚
■ 処方
理中丸加味
(人参、乾姜、炙甘草、白朮)
【腎陽虚証】
■ 症状
四肢と腰の冷えや痛み、寒がり、疲れ、顔色晄白、眩暈、むくみ、下痢、小便清長、腰膝痠軟、
性欲減退、性能力の低下、舌淡体胖苔白、脈沈細弱
■ 治法
温補腎陽
■ 処方
八味地黄丸加減
(桂皮、炮附子、山薬、山茱萸、茯苓、牡丹皮、沢瀉)
【子宮虚寒証】
■ 症状
四肢と腰の冷えや痛み、寒がり、疲れ、顔色晄白、生理不順、生理痛、温めると楽になる、
出血の色が淡い、血塊あり、不妊症など
■ 治法
温腎散寒、調経止痛
■ 処方
艾附暖宮丸
(艾葉、香附子、当帰、川芎、地黄、呉茱萸、続断、芍薬、黄耆、桂皮)
【陰寒内盛証】
■ 症状
四肢と腰の冷えが目立つ、温めると回復が早い、疲れ、顔色晄白、腹痛、下痢、
女性の場合は生理不順、生理痛、舌淡苔白脈沈細
■ 治法
温中散寒
■ 処方
少腹逐瘀湯
(小茴香、乾姜、延胡索、没薬、当帰、川芎、桂枝、赤芍薬、蒲黄、五霊脂など)
【気滞血瘀証】
■ 症状
四肢と腰の冷えや痛み、寒がり、疲れ、顔色晄白茴、鬱っぽい、溜息、胸脇脹満、疼痛、腹痛、
下痢又は便秘、舌尖紅、舌苔少あるいは舌苔薄白、舌下脈絡青紫、脈弦細あるいは細渋
■ 治法
疏肝理気・活血通絡
■ 処方
柴胡疏肝散加減
(柴胡、枳殻、芍薬、甘草、香附子、川芎、陳皮など)
【血虚血瘀証】
■ 症状
四肢と腰の冷えや痛み、寒がり、疲れ、めまい、心悸、不眠、四肢のしびれ、生理不順、
腹部隠痛または刺痛、生理の出血量少、色淡または紫、血塊がある、舌淡苔薄白、舌下脈絡青紫、唇淡、脈細弱あるいは細渋
■ 治法
養血益気、活血化瘀
■ 処方
十全大補湯加減
(当帰、熟地黄、川芎、芍薬、人参、白朮、黄耆、茯苓、甘草、桂皮など)
冷え症の改善策
① 冷え症改善の第一歩は、まず自分の生活を見直すことから始めましょう
●中医学で考える冷え症に対する病因病機は以下の場合が多くみられます
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立如松(立つのは松の木の如し)
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坐如鐘(坐るのは鐘の如し)
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臥如弓(臥すのは弓の如し)
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行如風(歩くのは風の如し)
●冷たい飲み物や食べ物を摂らないように、或は控えめにしましょう
飲み物やお弁当や、出来るだけ常温以上のものを、或はレンジで温めてから摂りましょう。
寝起きや食前に、白湯をコップ一杯飲むのもおすすめ。内臓が活性化することで身体が芯から温まります。
●糖質たっぷりのお菓子屋ドリンクを控えめにしましょう
中年以降に起こる冷え症は、血管が縮まり血行が悪くなっている状態。つまり動脈硬化の現れの可能性があります。
糖質を摂りすぎて、血中の血糖値や中性脂肪が増えると血管は詰まりやすくなるので、糖質コントロールをしながら熱を産生するたんぱく質や質の良い脂質を摂ることです。
② 栄養バランス良く摂る
冷え性の改善策として非常に有効なのは、バランスのよい食事をしっかり摂ることです。
よく嚙んで食べることで、食事誘発性熱生産は高くなりますので、1口30回を目安によく嚙んで食べましょう。
特に、胃腸の弱い冷え症さんには、よく噛むことがおすすめです。
また、朝食を抜かずに、3食決まった時間に食べることで自律神経のバランスも整います。
③ 適度な運動
血液の流れを良くするためには、新陳代謝を促進することです。
新陳代謝を促進するのに最も効果があるのは、運動することです。ハードなスポーツでなくても構いません。軽いウォーキングでも良いでしょう。毎日の生活の中で少し歩く量を増やしたり、仕事や家事の合間に簡単なストレッチをするだけでも十分なのです。
特に、就寝前のストレッチや呼吸法、お腹のマッサージ法は、血行が良くなって体温が上がり、ぐっすりと眠ることが出来るでしょう。
普段の生活で少し体を動かすことを意識しながら生活してみて下さい。
④ 入浴
シャワーではなく、お風呂に使って体を温めるのが冷え症改善に最も良い方法のひとつです。
38~40℃くらいのぬるめのお湯に入浴しましょう。じんわり汗をかくくらいまで、少し長めにお湯に浸かると良いでしょう。
副交感神経が働いて血管が広がり、血行が良くなります。リラックスして体の芯から温めましょう。
冷え症でお悩みの患者様へ
冷え症は病気であり体質の問題でもあります。
原因を見極め、正しく適切な漢方薬を使うことが重要です。
原因をしっかり見極め、万病の原因となる冷えを克服しましょう。
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